過払い金の時効について
過払い金とは
過払い金とは、法律で定められた上限金利を超えて払いすぎた利息のことです。借金を完済している方は発生した過払い金を手元に取り戻すことができ、借金を返済中の方は借金を過払い金で完済または減らすことができます。また、返済を延滞したことによって発生した遅延損害金でも、法律で定められた上限金利を超えて支払いをしていれば、過払い金が発生しています。
過払い金請求とは
過払い金請求とは、貸金業者に対して利息制限法を超える利息を支払っていた場合に、利息制限法を超える部分の支払い、つまり払い過ぎていた利息を返還請求し、取り戻す手続きのことです。
過払い金の時効
過払い金はいつまでも請求できるわけではなく時効があり、時効を過ぎると請求できなくなります。過払い金請求の時効は、基本的に最後に取引した日から10年です。時効は法律で定められており、時効になってしまった過払い金は取り戻すことができません。注意する点は、取引開始から10年ではなく「完済から10年」という点です。仮に取引開始が20年前だとしても、完済してから10年以上経っていなければ、過払い金を取り戻すことはできます。
例えば、2010年7月1日に借入れを開始し、2017年6月30日に完済した場合は、完済した2017年6月30日が最後の取引となります。時効の成立は、そこから10年後の2027年6月30日ということになります。そして、時効である2027年6月30日までに、取引履歴の取寄せや、過払い金の計算、過払い金返還請求書の送付までを完了しなければ、回収できる過払い金がゼロになってしまいます。
また、2020年4月1日から施行された改正民法では消滅時効の規定が変わり、最後に取引した日から10年に加えて、引き直し計算の結果、過払い金請求ができることを知った日から5年を経過した場合も時効が成立するようになりました。そのため、2020年4月1日の後に完済して発生した過払い金は、過払い金請求ができることを知った日から5年を経過すると、完済してから10年が経過していなくても時効になってしまう可能性があります。
時効が成立していなくても過払い金請求せずに放置しているといずれ時効が成立してしまい、過払い金を取り戻すことができなくなってしまいます。損をしないためにも過払い金がある場合は早めに過払い金請求をするべきです。
途中で一度完済し、再び借入と完済を繰り返している場合
過払い金の計算は、原則としてすべての取引が対象となります。そのため、一度完済し、途中に同じカード会社と取引がなかった期間があったとしても、最後の取引から10年または過払い金を請求できることを知ってから5年以内であれば、過払い金を取り戻せる可能性があります。
以下のような借入と完済を繰り返した場合を例に考えてみましょう。
① 1992年4月に借入し、2010年4月に完済
② 2010年7月に借入し、2014年8月に完済
一度目の借入である①に関しては、2010年4月から10年が経過する2020年4月に時効を迎えるため、過払い金の請求はできません。しかし、二度目の借入である②に関しては、2014年8月から10年が経過する2024年8月に時効を迎えるため2023年の時点では過払い金の請求が可能です。しかし、①と②の間に取引のない期間があったとしても、「連続した1つの取引」とみなされれば、①も②も同様に2024年8月が時効となります。
上記にように、すでに完済して時効を迎えている取引があり、その後に新たに取引を開始した場合であっても、その一連の取引が「連続した1つの取引」と認められれば、時効は最後に完済した日から10年となります。「連続した1つの取引」と認められるか否かの判断は、裁判官によって意見が分かれるようですが、基本契約の個数、両取引の内容・条件・経緯、前後の取引の間隔の長さ等を考慮して事案ごとに判断しているようです。一般的に、取引のない期間が半年以内程度であれば「連続した1つの取引」としてみなされやすく、1年以上だと「別々の取引」として扱われる傾向にあります。
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